【書評】『ポップコーンはいかがですか?』

「今後すごく役に立つ情報があるよ。何を勉強しないと成功できないのかがわかる。」
こう薦められ手に取ったのがこの『ポップコーンはいかがですか?』でした。著者は、海外諸国の波風に翻弄されながら、一文無しの状態から己の人生を見つめて”夢”の実現に文字通り体当たりで臨み、30歳の若さでVirgin Cinemas Japanをたった1人で立ち上げた山本マーク豪という方です。設立してわずか5年半で事業を軌道に乗せ、全国10ヵ所でシネマコンプレックスを展開、最終的には2003年に東宝に会社ごと100億円で売却しました。
彼の尊敬すべき所は、まず夢を明確に抱いており、その夢を果たすためのロードマップを着実に自分の手で作り上げている、という点です。先見性と言えば聞こえは良いですが、何かを予測するためには現在の状況・過去のデータを綿密に分析しなければならず、その作業を怠らなかったことで彼は未来を見据えた経営戦略を立案することができたわけです。映画業界特有のゴシップや内輪イベントに時間を無駄にせず、業界紙より経済紙の購読に時間を割き、様々な要因が自社事業に影響を及ぼすので、国際情勢や世界経済、為替相場などマクロ的な経済動向などに目を光らせることを欠かしていませんでした。
また起業家に必要なスキルとして、『数字を読む力』と『法律を読む力』を挙げているのも1から全て創り上げてきた彼の実利的な側面が見えます。投資を受けるためのプレゼンの場面では、事前に徹底的リサーチと分析を欠かさず、財務諸表や市場成長予測などの数字を以て事業に対する溢れる情熱を客観的に理論立てたのです。また「望み通りに契約を結びたいなら、自分が草案を書く側に回れ」という言葉を常に胸に刻んでおり、契約条項の抜け道や曖昧な言葉の使い回しによって企業経営に万が一の支障が出ないよう、法律の”行間”を読み取る能力の必要性も説いています。
夢が彼の事業を進める推進力となったことに彼自身異論は無いでしょう。半端な努力では夢を達成することはできず、本当の意味でゼロからのスタートで常に120%の努力をし続けてきたからこそここまで説得力のあるメッセージとして我々の胸に突き刺さるわけです。ビジネスで成功する最大の要素は、人がやらない時に積極的に事業を拡大していくこと、つまり経済や産業の落ち込み時に資本を増強する強さが必要、という言葉はまさに今サブプライム不景気だからこそ印象に残っており、我々に挑戦者魂を今一度燃焼させよと発奮させているように思えました。そして、男女や国籍などで絶対差別はしない、好成績に対する報酬制度を設定する、責任と自由を与える経営を行う、競合他社と距離を置き競争心を維持する、若い人にチャンスを与える、スター社員を育てる、実質本位の経営を行い信じた道を貫く、という豊富な人生経験に基づく彼の経営論はどれも本質を突いており、彼の洞察力と判断力は特筆に値します。その洞察力と判断力を高めたものは何なのか?・・・それは、夢を追いかけることに一切妥協しない覚悟なのです。
いわゆるドラッカーやコトラーの経営古典書には決して書かれていない、本当にゼロからのサクセスストーリー。古今東西様々な種類の”経営本”を読みましたが、心の底からタメになったと思えたのはこの本が初めてでした。

