2009年2月18日付のForbes誌に掲載された「日本の富豪40人」。保有資産61億米ドル(約5700億円)で首位に立ったのが、現在絶好調のUNIQLOを統率する株式会社ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井正氏です。今をときめくファストファッション市場の一翼を担うユニクロと、郊外型店舗で確実に売上を確保し続けるしまむらの2社を追いかけて「強さの源泉」を分析することで、市場変化とそれに伴う小売業の変遷、そして企業独自の技術革新・価値創造などに関する示唆を得ることができます。完全自社流通手配・商品製造vs完全アウトソーシング、店舗主導vs本部主導など2社のビジネスアプローチや方法論は全くもって対照的ですが、共通項として挙げられるのが徹底したコスト管理。環境変化に動じない強靭な企業体質へと磨き上げるこだわりを2社からは感じました。欲を言えば、しまむらに関しては「ちょっとダサい」印象を持たれているにも関わらず、どうして数千億規模のビジネスに成長し得たのか、という所を掘り下げていってほしかったですね。しかしながら、「消費ニーズの多様化」「ブランド志向」「財布の紐が堅い」などという外部の雑音に迎合することなく本当に消費者が求める価値とは何かということを見据えた上で、これからの流通業の未来を占う上で参考になる1冊だと思います。

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グローバル経済時代:
表面的利益追求に走る→生産拠点の移動に伴い下がるアパレル商品の原価が売価に反映されるには時間差があり、そのタイムラグを出来るだけ長く稼いで利を貪る
⇔ 顧客志向を鮮明にし国際価格を追求する→原価低下のメリットを出来るだけ早くストレートに消費者に還元することを企業としての差別化基本戦略とし、消費者はそこで節約したお金を他の消費に回すことでより豊かな生活を楽しめる
=ユニクロ・しまむらのスタンス(+独自の生産調達方式・低価格良質衣料を大量供給)
「製」(生産機能)⇔「配」(中間流通機能)⇔「販」(小売機能)
:ユニクロ=完全SPA小売業・・・「製」と「販」を直結させることで「配」を不要にした
:しまむら=徹底したベンダー(メーカーや問屋)集荷の品揃え小売業(物流を含めて自ら問屋機能を内包する究極の集荷型企業)・・・「製」を分離し、「販」をメインに「配」を内包した


ユニクロ初期の成功・成長要因
(1)ローコストな海外(中国)調達型SPA体制をいち早く確立
(2)規格統一された標準型店舗を郊外ロードサイドに“先手必勝”で量産
(3)徹底した本部主導型オペレーションとマニュアルによる店舗の“自動販売装置”化
(4)間口の広いターゲットを対象に、小商圏でも成り立つ「カジュアルコンビニエンス」という新マーケットを構築
(5)アイテムを絞り込むことでロットを拡大し、品質と価格のバリュー感を極限にまで高めた
→完全プロダクトアウト型の生産・販売方式

初の挫折:過剰適応による不適応
・旺盛な新規出店と既存店の低迷で収益が陰り出す
・チェーン網が何百店規模→顧客にとって希少価値希薄化・マニュアル化されたスタッフのパフォーマンス
・新業態(ファミクロ・スポクロ)・新規事業(SKIP:食品事業)の失敗・撤収

V字回復(20世紀末~:2001年8月まで34ヵ月店舗数が前年を上回る)
・企業改革(役員人総入れ替え)
・本部主導から店舗主導への大転換(店頭からも顧客ニーズを吸い上げ適切な商品を適切に補給)
 →ABC(All Better Change)改革:売れるものをどう作るかという顧客ニーズ対応スタイルへ変化
・店舗発注システム・スーパースター店長制度・サプライチェーン再構築
「フリース」と「原宿店(=郊外店のユニクロが都心のど真ん中に逆進出)」によるユニクロブーム
→異常なブームが去った後大失速するも経費率約30%の通常範囲をしっかり維持(=凄まじい経費コントロール・リストラ)

成長の第3ステージ
・柳井社長復帰→ファーストリテイリング持株会社化
・委任型執行役員制度の徹底・役員総入替による組織内活性化
・機能別組織(企画管理/マーケティング/生産管理など)から商品事業部別組織に改編
・世界主要都市にR&Dセンター設立(MD情報・開発拠点)
・海外店舗展開(英国、上海、韓国、米国、北京、香港)(ニューヨークに大型旗艦店設立)
・M&A(海外アパレル企業を次々子会社化)
・国内新規事業(ジーユーなど)

ユニクロのベーシックカジュアル=あらゆる人に合う服・日常を快適に過ごせて老若男女誰でも着られるしっかりとした普段着
SPAの優位性を最大限に生かす単品大量マーチャンダイジング
・生産基地現地にバイイング事務所を開設、商社任せにせず中国の製縫工場との直接折衝・発注体制を整備
・アイテム数の絞り込みで1アイテム当たりのロット数を拡大
・コア商品の売り逃しを減らすためシーズン入り後の追加生産と販売体制を強化


しまむら・・・業界一規模の大型店で低坪効率・低粗利益率に関わらず高い営業利益率を叩き出す
・低い経費(販管費)率
・1号店舗からチェーン化を前提にセントラルバイイング(本部集中仕入れ)開始
(1)圧倒的な低価格路線で客数を伸ばし、客単価の低下をカバーする(デフレに対応して戦略的・継続的に商品価格を引き下げる)
(2)出店拡大(=全体売場面積増加)に伴う坪効率・坪経費低下(粗利低下を確実に下回る)におけるバランス(+オペレーション効率化によるコスト削減効果)⇒総営業利益高増加
しまむらのMD:追加仕入れ不要・売り切れ御免(機会損失の防止<売場の鮮度維持・変化訴求)
・・・常に数多くの仕入先を自由に取捨選択できる集荷型小売業
高速配転主義(ゼネラリストの育成を念頭に2,3年周期で担当・部署換え)


ユニクロ・しまむらの価格政策・マーケティング戦略
・重要なのはあくまでも実勢の市場ニーズ(顧客ニーズ)であり品質に見合った適正価格(顧客から見たリーズナブルプライス)の追求
・この独自に形成された価格が市場価格として認知され、それに他社が追随せざるを得なくなった=結果として大衆衣料の価格相場決定権を牛耳った
・カジュアルはユニクロ、デイリーはしまむらで買うのが今のスタンダード
『絶対価格と購買スタイル革命による新しい消費価値観の形成』
ユニクロ:ブランディング強化
しまむら:ストアロイヤリティ強化


2002年以降の戦略シフト方向転換・・・価格軸から付加価値軸へ
ユニクロ=商品価値向上への徹底した戦略シフト
(1)ベーシック重視一辺倒からシーズン・トレンド・スタイル重視へ
(2)品質と付加価値アップ(カシミア、エアテック、ドライ、美脚など)
(3)アイテム拡大とカテゴリ付加(キッズ、インナー、服飾雑貨)
しまむら=低価格訴求からの方向転換
(1)積極的なトレンドの打ち出し・強化
(2)サプライヤーとの取り組みによるプライベートブランドの強化・充実
(3)明確な売場提案訴求

第三世代SPA(次世代SPA)を目指すユニクロ
=プロダクトアウト型SPAではなくマーケットイン型SPA=現場情報・反応もシステム的に反映される双方型コンセプトとものづくりへの挑戦


消費創造時代の強い流通業であるためのキーワード
(1)Solution:スタンダード商品で満たされた後他と違う個性的な生活を望むが、そのライフスタイルをいかに表現するかという悩みを解決してほしいという本音ニーズが顕在化する
(2)Destination:品揃えの良さ・競合優位な用途機能の豊富さを以て、はっきりとした目的を以て顧客が目指す店であるべし
(3)Life Style:TPO・自分らしさに応じたスタイルの選択を行う消費性向の中、多様なスタイルを選択できる売場作り・商品編集・コーディネーション活動が求められる