昨日Stanfordから車で15分くらいのSushitomi(@Mountain View)で、現在3度目の会社としてMiselu, Incを起ち上げている吉川欣也さんと、東大のイノベーション政策研究センター助教でVisiting ScholarとしてStanford Universityで研究する柴田尚樹さん(いつもお世話になってます笑)とランチをする機会がありました。2日前程に東大院技術経営戦略学専攻の同級生たちがSilicon Valleyに研修で訪れた時に、自分も一緒になって吉川邸を訪問しいろいろお話を伺ったので顔は覚えて下さっていたみたいです。

さて3人でお話するとなると、やっぱり話題はSilicon Valley、そしてMiseluのサービスの話になってきます。特に今回はSilicon Valleyのヒト・モノ・カネの在り方に関してかなり学ぶことができました。柴田さん曰く、「やはりSilicon Valleyはやはりオープンな環境が非常に居心地が良くて、TechCrunch50のボックスプレゼンの時もすぐそこに名だたる有名人、Tim O’reillyやPaul Grahamが触れる距離にいるんですよ。でも、それはただの物理的距離であって、本質的な距離としては非常に遠いというのが実際にあの場に立って分かりました。」どうしてもCaliforniaの陽気が後押しするだけあって、現地の人々は大概オープンマインドを持っており非常に物事をポジティブに考えています。しかしそれは誰とでもすぐに仲良くなれて情報共有や共同活動を行う素地かというとそれはNoであり、彼らのオープンさ・コミュニケーション深度はある程度の奥行き、誤解を恐れず言うなら表面的、ということができます。誰に対しても”Hi!” “Hello!” “Nice to meet you!” “Thank you!”を言い(ほぼautomatic response)、積極的にその場の良い雰囲気作りを行う彼らですが、そこまでです。深い付き合いは、(日本もそうですが)やはり何度か直接会って会話や食事を経ないと結実しません。しかもSilicon Valleyでは日本以上に人脈が価値を持つというか、もちろん結果が最重要視されることに変わりはありませんが、誰からの紹介でこの場にいるか・誰とどんなネットワークでつながっているかなどといった極めて人間的なネットワーク力が大きな評価因子の1つです。オープンな環境で幅広いネットワークを築くことができる一面で、近くに感じ取れる距離にいれるからこそ感じる物凄く高くて透明な壁がそこには何重にも行く手を阻んでいるのです。

その壁を越えるために必要なこととして吉川さんが挙げたのが「5年はここにいた方が良い」ということです。Silicon Valleyに留学/派遣/駐在で来た日本人は非常に有能なのにほとんどが2年ぐらいで帰ってしまうため、現地の各コミュニティーにおいて「どうせ日本にすぐ帰ってしまうんだろ」と思われ日本人は継続的なコミットができない人たちだという印象が根付きかねません。「私は最低10年はここで技術開発を手がけるつもりで来ました」と言うと、現地の業界人は「おっ」と真剣な顔付きになるそうです。こちらで会社を立ち上げる際、その立ち上げプロセスを甘く見てはならず、身辺整理やネットワーク作りに約2年、ビジネス構想・起業準備に約2年、実際にベータ版を作り上げるまでに1年程かかるため、2年で帰って日本でSilicon Valleyの話をしても何のエッセンスも伝わらないわけです。とはいえ、やはり挑戦者精神が随所に漂うこのSilicon Valley、実際に会社を興して何か自分の手で価値を作ろうとする人たちを温かく見守ってくれますし、弁護士・会計事務所もスタートアップには寛容で、例えば創業から半年間の支払いはツケにする・500万円までは支払請求をホールドする・一部株での支払いを認めるなど、彼らもスタートアップに対する寛容なSilicon Valley精神を尊重する1人なのです。また日本のように一度失敗したらその後は全て落伍人生というわけではなく、(同じことを繰り返してはいけませんが)失敗の数だけ経験を積んでいると高く評価されるのです。一度悪いことをしたけれども改心して頑張って成功を収めるといった、ゲインロス効果の体現とも言えるストーリーをアメリカ人は非常に好むそうです。


そしてさらに印象的だったのが、「起業家もVCも言わば演歌歌手で、持ち歌1個で10年20年生きている人は山ほどいる。でもその持ち歌1個作るのに苦労するのがSilicon Valley」という吉川さんの言葉。やはり長年Silicon Valleyに根を下ろして業界の酸いも甘いも経験したからこそ言える本質論です。そして、自分として最も目から鱗だったのが、「TechCrunchとかCNETとか華々しくて目を引く技術系記事も良いが、本当にインターネットや情報技術の根幹を理解しこれからの潮流を知りたいのなら、Silicon Valleyで10年20年トップに君臨し続けているHPやCiscoといったSilicon Valley トップ10企業のWebサイトを舐めるように見るのが本当は良いんだ」という言葉です。確かにLally Ellison(Oracle CEO)やAndy Grove(Intel CEO)といったSilicon Valleyの名経営者は、もちろんコミュニティーの中での信頼を勝ち得ているのは当然で、自社の技術の価値や市場内での位置付けを客観的に理解した上で積極的な経営を行っており、さらには競合としての新興ベンチャー企業を適切なタイミングで買収していくため市場動向や技術革新に非常に敏感です。業界を俯瞰的に見て今なお成長を続ける老舗IT企業があるからこそ業界全体が成長し、その大企業の買収戦略があるからこそベンチャー企業のEXIT戦略がIPOだけにとどまらないという意味においても、彼らSilicon Valley トップ10企業分析は疎かにしてはならず、むしろそのCEOのコメントや最新情報には最も注意して耳を傾けなければならないのだと強く感じました。

そして意味深に「根本的に今のインターネットとこれからのインターネットは違ってくるよね」と仰る吉川さんは、インターネット草創期から業界の最前線に立って潮流を肌で感じています。そんな大先輩にも関わらず小童の自分の質問に気さくに答えて下さってかなり込み入った話を聞けたのですが、知らず知らずのうちに長くなりすぎて、秋学期が始まったばかりなのに早速大学の授業に遅れるところでした笑(遅刻3回で単位×) また機会を見つけてIP Infusion時代の苦労話やEXIT戦略の最適化のお話も伺ってみたいと思います。いや、楽しかったです。